Booking.comUXデザイナーが語る! グローバル展開における新規市場開拓の秘訣~オンラインセミナーまとめ~
日本でも有名な世界最大の旅行予約サイト「Booking.com」。
こんな世界的大企業でも新興国におけるシェア獲得には苦戦したそうです。
Booking.comのUXデザイナーのCamilleさんは、インドネシア市場開拓をアサインされ、調査のもと完全にローカライズされたホテル予約アプリを開発。
しかし、意気揚々と現地オフィスに赴いた彼女のの目に真っ先に飛び込んできたのはホワイトボードに大きく書かれた「このデザイン、最悪!」という文字。
一体何がいけなかったのでしょうか?
セミナーでは、プロジェクト立ち上げからリリース後まで、新興国市場開拓における試行錯誤をお話いただきました。
目次
【動画】Booking.comUXデザイナーが語る! グローバル展開における新規市場開拓の秘訣
※元英語版は本ページ下部にリンクがございます。
(English version is also available at the bottom of this page.)
現地からのフィードバックは「このデザイン、最悪!」
インターネットユーザーが多いインドネシア市場獲得をアサインされたCamilleさんは、6名のチームでプロジェクトに取り組みました。チームにはインドネシア渡航経験のあるメンバーは1人もおらず、インターネットや知人から情報を集めたうえで、インドネシア国内向けのホテル予約アプリを開発したそうです。
アプリのリアリティチェックを行うために現地オフィスへ赴き、真っ先に目にした言葉はホワイトボードに大きく書かれた「このデザイン、最悪!」。日本では考えられないくらいストレートな批判!一方で、きちんと現地に赴いて、作ったプロダクトについて初期段階でユーザ調査を行う姿勢が当たり前にあるのが素敵だなと思いました。
この辛辣なフィードバックを受けたCamilleさんのチームは、一体何が「最悪」だったのか、どうすればインドネシアのユーザに受け入れられるデザインになるのかを徹底的に調査。その結果をデザインに反映させ、新しいものを作ってはテスト、作ってはテスト、を繰り返し、現地スタッフも納得のいく仕様にたどり着くことができました。
欧米の「グッドデザイン」はインドネシアの「バッドデザイン」
興味深いのは、Camilleさん達が当初立てた仮説がインドネシアの実情と大きく異なっていた点です。
検証の結果、間違っているとわかった仮説
- 仮説1:データ通信量をできるだけ使わないように必要最小限の情報が欲しい
→インターネット環境が充実しているのでデータ通信量は気にしない。ホテルの情報はたくさん欲しい - 仮説2:できるだけ短いプロセスで予約したい
→予約プロセスが短いとユーザは「本当に予約できたのか」と不安になる - 仮説3:欧米で主流の「洗練された」控えめな色使いが好まれる
→楽しい印象を全面に押し出すトロピカルカラーや写真、イラストの多用が求められる
Camilleさんは当初、欧米で人気の、多色使いを避けたスタイリッシュなデザインのアプリをリリースしました。しかし、インドネシアではとにかくにぎやかで楽しい印象のデザインが主流のため、現地の競合他社のデザインとあまりにも異なったものに。アプリを見たユーザからは「このアプリは詐欺だ」という声さえあがったとか。
たしかに、普段接している「トンマナ」と全く違う方向性のデザインに出会った際に現地ユーザが戸惑うのは当たり前。
しかし、その「違い」も、直接ユーザに聞いてみるまではなかなか気づけないものですよね。
まとめ:インドネシア市場開拓の経験からの学び
Camilleさんが本プロジェクトを通じて学んだことは以下のとおりです。
デザインは主観的
全世界で通用するデザインの基準はない。ある市場で魅力的であるからといって、別の市場でもそうとは限らない。
謙虚さがカギ
- 新しい市場にアプローチする際は、「自分は無知である」ということを自覚する
- 自分が取り組んでいるプロダクトが実際に使われる国・地域を訪れて、文化的な行動やユーザからの期待を真の意味で理解することが重要
- 自分たちはユーザのことなど何も知りえない。ユーザテストあるのみ
革新的なことは二の次
まずはユーザの基本的なニーズや期待を満たすこと。それを達成してから初めて革新的なことに取り組む。
なるべく早い段階でフィードバックを
プロダクト開発を行う際は、そのプロセスのなるべく早い段階でユーザのフィードバックを集め始める。
いかがでしたでしょうか?UXデザイナー視点でのCamilleさんのお話はとても学びが多く、非常に興味深いものでした。
動画では、実際セミナーで使用されたスライドと共に、各フェーズでのアプリの実際のプロトタイプもご覧いただけます。日本語版はラジオ感覚でも聴いていただけますので、是非通勤中などご活用ください!